毎週末のニューヨークタイムズ紙などを読んでいましても、しつこい程の米国雇用状況の低迷(公表失業率がコンスタントに9%強、州によっては10%以上)が伺えます。 そして、数ヶ月前の同紙の投稿欄に、クリントン政権時の労務省長官であったライシュ氏が、米国の「失業統計」についての大変興味ある見解を述べていました。タイトルが、「Self-Employment or Unemployment?」。 これだけでも米国での労務実務に詳しい読者は、一瞬にしてライシュ氏の主旨を読み込んだことでしょう。 米国では、1980年代のIBM大変革を契機に、いわゆる独立自営業者(Self-Employment、別称、フリーランス)が急激に深まり、彼ら、彼女らの存在は、米国の公表失業率を押し下げているのではないか、ということです。 一方、米国での雇用状況と景気後退(レセッション)のその「前後」について、また大変興味ある記事が、米国公認会計士協会の月刊誌、「Journal of Accountancy」2010年9月号にありましたので、遅まきのようですが、決してそうではありませんので、ここに紹介いたします。 これは2010年9月号の同誌の記事で、今、目の前の日本国での未曾有の大震災の半年も前のものです。 その記事には、米国労務省の詳細統計データなどを駆使したもので、ここではそれらのデータ掲載は割愛しますが、客観性を重んじる読者は是非、同誌も参照ください。 興味ある主要記事は以下の2点。 ① 米国での過去50年間くらいの景気後退時期、1957年、1970年、1981年、1990年、2001年、2007年前後の、雇用(Employment、あるいはJobs)の回復期間について、過去にはおおよそ15ヶ月から40ヶ月前後で回復していたが、今回(2008年秋のリーマンショックが有名でしょうが、米国経済調査機関公表では2007年度中にレセッション入りとしている)は、その回復には2020年くらいまで、つまりはなんと140ヶ月くらいも要する、という恐るべき見通し。 そのような雇用回復の足を引っ張る主たる背景は、
そして、上記のような経済、社会状況を十分吟味することなく雇用増大に走るマネッジメントへの警告を発しています。それらの結果、今後10年くらいの米国での雇用、労務に関し、マネッジメントつまりは雇用者のみならず、被雇用者も、両者ともに以下のような傾向、状況につき注目すべき、、としています。
② デューク大学などによる世界のCFO向けサーベイについて。それらの主要所見は、
以上による、逆説的な見方と言われるやもしれませんが、一連のレセッションを通じての一つの明るい見通しは、雇用の縮小の延長線上での生産性、効率性の増大である、としています。しかし、一方で生産性、効率性増大を果たした後に、レイオフされた従業員を職場に戻す機会がさらに失われつつあり、多くの経営者は新規雇用を先送りし、かつ、生産性の維持向上を図る様々な方策を試行錯誤している。 以上が、表題の米国の雇用状況全体と「会計アウトソーシング」への転換、という古くて最新の経営方策検討の見解紹介です。会計アウトソーシング実務の中味は、単純そうで、現実は相当に複雑多義にわたるでしょう。要するに経営者の姿勢と担当会計士との信頼関係、相関関係につきます。やり方によりましては、上記全てのCFOの悩みに応えることも決して不可能ではない、と考えています。 最後に、ノーム・チョムスキーが「マニュファクチャリング・コンセント」で言っているように、マスメヂアには強烈な世論操作の力があります。同様に、会計「言語」にも世論を動かすかどうかはともかく、パワーがあります。会計士の言葉で述べる、経済見通しもとりわけ米国では経営者にそれなりの影響力を示す。したがって、会計士は言葉には注意する必要があります。その言葉の究極の局面が監査意見なのでしょうが、今回のこの2010年9月号の米国公認会計士協会月間誌の筆者は、あるいは、強烈な共和党支持者で、オバマ政権を1期限りで終わらせたい、という強烈な意思表明をしたのやもしれません。 |
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