2011年6月8日 米国での雇用状況全体と「会計アウトソーシング」への転換

posted Jun 8, 2011, 6:17 AM by Naoko Konno   [ updated Jun 8, 2011, 6:30 AM ]
毎週末のニューヨークタイムズ紙などを読んでいましても、しつこい程の米国雇用状況の低迷(公表失業率がコンスタントに9%強、州によっては10%以上)が伺えます。
そして、数ヶ月前の同紙の投稿欄に、クリントン政権時の労務省長官であったライシュ氏が、米国の「失業統計」についての大変興味ある見解を述べていました。タイトルが、「Self-Employment
or Unemployment?」。
これだけでも米国での労務実務に詳しい読者は、一瞬にしてライシュ氏の主旨を読み込んだことでしょう。
米国では、1980年代のIBM大変革を契機に、いわゆる独立自営業者(Self-Employment、別称、フリーランス)が急激に深まり、彼ら、彼女らの存在は、米国の公表失業率を押し下げているのではないか、ということです。
一方、米国での雇用状況と景気後退(レセッション)のその「前後」について、また大変興味ある記事が、米国公認会計士協会の月刊誌、「Journal of Accountancy」2010年9月号にありましたので、遅まきのようですが、決してそうではありませんので、ここに紹介いたします。

これは2010年9月号の同誌の記事で、今、目の前の日本国での未曾有の大震災の半年も前のものです。
その記事には、米国労務省の詳細統計データなどを駆使したもので、ここではそれらのデータ掲載は割愛しますが、客観性を重んじる読者は是非、同誌も参照ください。

興味ある主要記事は以下の2点。

① 米国での過去50年間くらいの景気後退時期、1957年、1970年、1981年、1990年、2001年、2007年前後の、雇用(Employment、あるいはJobs)の回復期間について、過去にはおおよそ15ヶ月から40ヶ月前後で回復していたが、今回(2008年秋のリーマンショックが有名でしょうが、米国経済調査機関公表では2007年度中にレセッション入りとしている)は、その回復には2020年くらいまで、つまりはなんと140ヶ月くらいも要する、という恐るべき見通し。
そのような雇用回復の足を引っ張る主たる背景は、
  • 拡大する年金危機
  • 継続するモーゲージローン破綻
  • ままならない財政促進策
  • 全く新たな医療保険制度
  • 為替変動
  • 高等教育費の異常なまでの高騰
  • 政治状況の不透明性

そして、上記のような経済、社会状況を十分吟味することなく雇用増大に走るマネッジメントへの警告を発しています。それらの結果、今後10年くらいの米国での雇用、労務に関し、マネッジメントつまりは雇用者のみならず、被雇用者も、両者ともに以下のような傾向、状況につき注目すべき、、としています。

  • 景気後退時期にどのような待遇を受けたかにより被雇用者の姿勢は進化を遂げる。
  • 被雇用者は自らの経済条件、ゴールについて、すべからく新規雇用主との関係と同様な目で検討を加える。
  • これまで残業を強いられ、かつ、報酬引き下げなどを体験してきた被雇用者の士気について。
  • 被雇用者退職プランの延期などによる彼ら彼女らの貯蓄計画の見直し。

② デューク大学などによる世界のCFO向けサーベイについて。それらの主要所見は、
  • 米国経済に関するCFOの楽観的見通しは、ゼロから100のスケールにて、49前年同四半期での58からは急落。あるいは悲観論者4に対し、楽観論者は1。一方、同時点での欧州勢CFOによる楽観的見通しは58、アジア勢CFOでは70、となっている。
  • CFOの半数は、経済的不透明を理由にキャッシュ持分をより引き締ようと考えている。他の半数は、次年度にはキャッシュの用途として、主に買収投資、ないし、債務返済にあてる、とのこと。
  • これからの12ヶ月間の増益見通しは12%、設備投資見込みは7%。しかし、CFOの半数は、全体の経済見通しが好転しない限り、それらの見通しは、この6ヶ月先までにすぎない、としている。
  • 米国のCFOは、次年度のフルタイム雇用増大見通しを0.7%としている。最近の雇用の4人に一人は、契約社員ないし臨時雇用である。
  • クレジットマーケットは依然厳しく、とりわけ小企業には著しい。多くのCFOは、金融再建には多大なコストと制約を要し、貸付状況はさらに厳しさを増すと考えている。
  • 世界中のCFOの主たる関心時は、連邦政府の政策であり、弱い消費者需要、価格競争、雇用情勢の低迷などなど。さらには、CFOの最大関心時は医療保険コストの増大であり、また、従業員の士気の低下である。
  • 今後5年間の輸出増大見通しは50%。

以上による、逆説的な見方と言われるやもしれませんが、一連のレセッションを通じての一つの明るい見通しは、雇用の縮小の延長線上での生産性、効率性の増大である、としています。しかし、一方で生産性、効率性増大を果たした後に、レイオフされた従業員を職場に戻す機会がさらに失われつつあり、多くの経営者は新規雇用を先送りし、かつ、生産性の維持向上を図る様々な方策を試行錯誤している。


以上が、表題の米国の雇用状況全体と「会計アウトソーシング」への転換、という古くて最新の経営方策検討の見解紹介です。会計アウトソーシング実務の中味は、単純そうで、現実は相当に複雑多義にわたるでしょう。要するに経営者の姿勢と担当会計士との信頼関係、相関関係につきます。やり方によりましては、上記全てのCFOの悩みに応えることも決して不可能ではない、と考えています。


最後に、ノーム・チョムスキーが「マニュファクチャリング・コンセント」で言っているように、マスメヂアには強烈な世論操作の力があります。同様に、会計「言語」にも世論を動かすかどうかはともかく、パワーがあります。会計士の言葉で述べる、経済見通しもとりわけ米国では経営者にそれなりの影響力を示す。したがって、会計士は言葉には注意する必要があります。その言葉の究極の局面が監査意見なのでしょうが、今回のこの2010年9月号の米国公認会計士協会月間誌の筆者は、あるいは、強烈な共和党支持者で、オバマ政権を1期限りで終わらせたい、という強烈な意思表明をしたのやもしれません。