日米の会計、税務等の実務変遷について

posted Aug 18, 2010, 10:26 AM by Unknown user   [ updated Aug 31, 2010, 1:54 PM ]
米国から長年、日米両国の会計、税務、あるいは組織再編関連での会社法務などなどを見てきておりますと、日本国側での極めて明瞭な「方向性」に誰もが気付かされます。要するに会計、税務、会社法などなどのほとんど全てにおきまして、日本国側は、米国側の制度を早ければ5年くらいの「遅れ」で、ある分野におきましては10年遅れ、いや15年から下手をすると20年くらいの「遅れ」でもって後塵を拝しております。それがいいかどうかは別の問題で、事実認識としては概ね正当な見方かと思います。

その制度的根拠は、少なくとも遡る事1993年、当時の宮沢首相とクリントン大統領の首脳会談で合意された「日米包括経済協議」にあるだろうことは間違いありません。私は、日米の公認会計士の仕事を通じて、確かに過去17年しっかりとその実体をこの目で見てきました。

「日米包括経済協議」の主旨は、日本経済の仕組みを米国の流儀にあわせることを大目的とし、1994年以降毎年10月に米国が「年次改革要望書」(日本経済のここを直せ、この規制をとりのぞけ、といった米国側の要求一覧)を日本国政府に手渡す。日本国政府はこれを受け取ると、内容に応じ財務省、法務省、経済産業省、農務省などなどと、仕分けをして各省庁に送る。担当の省庁は、その実行方法を検討し、可能なものから実行に移していく。法律の制定や改定が必要なものは国会にかける。その間、米国と日本国の担当者が定期的に集まって、当該「要望書」の要求事項の進捗状況をチェックし合う。翌年3月、米国政府は米国の要求受け入れと執行状況を、「外国貿易障壁報告書」にまとめて米国議会に提出する。(不破哲三 「激動の世界はどこに向うか-日中理論会議の報告」 新日本出版社 2009年9月初版から)

そういうものです。かの有名な郵政民営化も当然にその延長線上の「現象」です。この「原理」をしっかりと理解しておきさえすれば、今後また近い将来、日本国で何が起こるか、あるいは起こりそうにないか、目の前の米国の「動き」を注意深く見ておきさえすれば、当たるも八卦、当たらぬも八卦、日本国民の一人として長年米国に居住することも決して損ではない、と私は考えております。

このような見方からも、米国実務の紹介の合間を縫って、適時、日本国の最新の動きも合わせご紹介する、この「日本国の税務速報」もそういう米国側制度の後追いを背景として、ご理解いただければ幸いです。そして、日本国の真の独立は、あるいは永遠の課題でもあります。


平成22年度 (2010) 税制改正


民主党政権により税制改正の枠組みは抜本的に見直されることとなりました。

平成22年度税制改正においては、納税者の視点に立って「公平・透明・納得」の原則の下、税制全般にわたり見直されています。


1. 特      徴

・政権交代により各府省の副大臣等政治家で構成される税制調査会の審議に基づいて政府が大網を決定

・現政権による税制改革の基本的な考え方、新税制改正の仕組み、各重要課題の方向性などを提言

・具体的な改正は、それほど多くはないが、いわゆる優遇税制が行われていない


2. 税制改正の税目

・法人課税

・国際課税

・個人所得課税

・消費課税

・資産課税

ここでは、法人課税、国際課税および個人所得課税の主要各論を説明いたします。


法 人 課 税

  -見直し事項-

100%グループ内の法人間の譲渡取引の損益の繰延べ

資産のグループ内取引により生ずる譲渡損益については、その資産がグループ外に移転する等の時まで、計上を繰り延べる。


[改正前]


[改正後]

100%グループ内の法人間の寄付

100%グループ内の法人間の現物配分

100%グループ内の法人からの受取配当等の益金不算入(負債利子控除)

[ ]

受取配当等について負債利子控除後の金額を益金不算入(法法23・81の4)

  具体的な受取配当等の益金不算入額は、次の通り

     ・連結法人株式等に係る受取配当等は、全額

     ・関係法人株式等に係る受取配当等は、負債利子を控除した金額

     ・上記以外の株式に係る受取配当等は、負債利子を控除した金額の50%相当額

 控除すべき負債利子の額は、負債利子の総額を、総資産に占める株式の割合で

      按分して計算

[改正後]

完全子法人株式等(※)に係る受取配当等について、負債利子控除をしない(法法23①④新⑤、81の4①新④⑤)

※完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係があった他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)の株式または出資として一定のものをいう(法法23新⑤、814新⑤)

 

100%グループ内の法人の株式の発行法人への譲渡損益

⑥大法人の100%子法人に対する中小企業向け特例措置の適用の見直し

⑦連結子法人の連結開始前欠損金の持込制限見直し

⑧連結納税の承認申請・承認の取消し

⑨自己株取得予定株式に係るみなし配当

⑩精算所得課税

 

. 国 際 課 税

-外国子会社合算税制( いわゆる“タックスヘイブン対策税制”)の見直し-

 ◆国外に進出する企業の事業形態の変化や諸外国における法人税等の負担水準の動向に 対応し、わが国企業の国際競争力を維持する観点から、外国子会社合算税制について、いわゆる「トリガー税率」を「20%以下」に引き下げる等の見直し。

 ◆同時に、租税回避行為を一層的確に防止する観点から、一定の資産性所得を新たに合算課税の対象とする等の見直し。

 

    トリガー税率の引下げ

トリガー税率(*)を「25%以下」から「20%以下」に引下げ

*外国子会社合算税制は、一定の税負担水準以下の国・地域にある一定の子会社等の所得に相当する額を、内国法人等の所得に合算して課税する制度であり、トリガー税率は、その一定の税負担水準を差します。

*トリガ-税率の引き下げにより対象から外れる国としては、法人税率(実効税率)で見た場合、中国、韓国、マレーシア、ベトナム等が挙げられます。

(但し、税負担の判定は、各子会社の実際の税負担を基に行われます。)

    適用除外基準(※)の見直し

企業実体を伴っていると認められる統括会社(事業持株会社・物流統括会社)の所得(下記③の資産性所得を除く。)について合算対象外となるよう措置。

(注)現行の人件費の10%相当額を控除する措置については、廃止

※企業としての実体等があるものと認められる基準(事業基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準又は非関連者基準)

 ③ 資産性所得に対する課税等

  資産運用的な所得として外国子会社が受けるポートフォリオ株式、債券の運用による所得、使用料について親会社の所得に合算して課税。


(注)上記①~③の改正は、外国子会社の平成224月1日以降に開始する事業年度から適用される。

 

個 人 所 得 課 税

-扶養控除の見直し-

◆「所得控除から手当てへ」等の観点から、子ども手当(*)の創設とあいまって、年少扶養親族(~15歳)に対する扶養控除(38万円)を廃止。

  (*)子ども手当は、平成22年度については、月額1.3万円が支給されます。

◆高校の実質無償化に伴い、1618歳までの特定扶養親族に対する扶養控除の上乗せ部分(25万円)を廃止。 

※ 平成23年分から適用されます。

 

 

  所得税

年齢

現行の扶養控除額

改正後の扶養控除額

0歳以上15歳以下

38万円

0円

16歳以上19歳未満

63万円

38万円

19歳以上22歳以下

63万円

63万円

3歳以上70歳未満

38万円

38万円

 

 

-非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の創設-

 

◆金融所得課税の一本化の取組の中で個人の株式市場への参加を促進する観点から、平成24年から実施される上場株式等に係る税率の20%本側化にあわせて、次の非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置を導入

 

1.    非課税対象    :非課税口座(注)内の少額上場株式等の配当、譲渡益

2.    非課税投資額  :毎年、新規投資額で100万円を上限

                     (未使用枠は翌年以降繰越不可)

3.    非課税投資総額:最大300万円(100万円×3年間[平成24年~26]

4.    保管期間      :最長10年間、途中売却は自由(ただし、売却部分の枠は

   再利用不可)

5.    口座開設数    :年間11口座(毎年異なる金融機関に口座開設可)

6.    開設者        :居住者等(その年11日において満20歳以上である者)

7.    導入時期      :平成24年から実施される上場株式等の20%本則税率化に

                      あわせて導入

(注)非課税口座とは、非課税の適用を受けるため一定の手続きにより金融商品取引業者等の営業所に設定された上場株式等の振替記載等に係る口座をいいます。